2011年04月29日

気管支鏡・BAL/TBLB3・気管支肺胞洗浄(BAL)液(=BALF)の解釈

BALは、気管支鏡を通して比較的大量(100〜150ml)の生食を流し込み、肺胞領域まで洗浄することによって、肺胞に存在する細胞の比や、肺胞に存在する病原体・特異的な物質などを検出するものです。


例えば、以下のようなものが検出されれば、確定診断につながります。

■病原体
ニューモシスチス・イロヴェツィーPneumocystis jirovecii(cyst、DNA-PCR)・抗酸菌・真菌・ウィルス・封入体細胞(サイトメガロウイルス感染を示唆)

■悪性細胞
癌・癌性リンパ管症・リンパ腫・リンパ増殖性疾患

■特異物質など
白濁した回収液(肺胞蛋白症)・だんだん濃くなる血性回収液/ヘモジデリン貪食細胞(肺胞出血)・好酸球(好酸球増多症候群)



BALF細胞分画の結果については、解釈は少々厄介です。

まず、明確なカットオフ値というのがない
そもそも正常範囲というのが、喫煙しているかどうかでかなり違います。


喫煙していると、煙に含まれているゴミを掃除するために、マクロファージが多数動員されます。従って、喫煙者のBALF中にはそもそも細胞数が多く、中でもマクロファージが比較的多く見られます。


なので、明確なカットオフ、といわれるとなかなか難しいのですが、一応、特定の細胞が増多傾向にあると、以下のような疾患を考えやすいです。


リンパ球増多: NSIP、COP、膠原病性間質性肺炎、薬剤関連性肺疾患、過敏性肺炎、サルコイドーシスなど
好中球増多:細菌性肺炎、びまん性汎細気管支炎、AIP、IPの急性悪化など。
好酸球増多:好酸球性肺炎など、好酸球増多症候群


また、リンパ球のうち、CD4+とCD8+、どちらが優位であるかによって、疾患を推定することができます。

CD4+>CD8+:サルコイドーシス、農夫肺、慢性ベリリウム肺、結核
CD4+<CD8+:COP、NSIP、AIP、薬剤関連性肺疾患、夏型過敏性肺炎など



BALだけであれば、検査に伴う合併症は比較的少なく、特に生検で生じる気胸や出血はほとんどありません。

生食が比較的多く体内に残ることから、それらが吸収される際に発熱することがありますが、多くは微熱程度で、高熱になることはあまりありません。


また、気管支鏡を通じて起こる感染も、頻度は少ないですがありますので、可能性が想定されるときは検査後経口抗生剤の内服を3日間程度処方する、ということが行われていました。しかしながら、あまりエビデンスのないところでもあり、省略するケースも多いようです。このあたりは上級医に相談しましょう。


また、特発性間質性肺炎の患者さんにBALを施行すると、それを契機に急性増悪が生じる(施行例の2.4%)と言われていますが、これは全く予測不能ですので、検査説明時のインフォームド・コンセントが必要です。


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posted by 長尾大志 at 13:35 | Comment(2) | 気管支鏡・BAL/TBLB
この記事へのコメント
先生、はじめまして。
先生と(少々若輩ながら)同世代の学習者です。
BALFについて、教科書の説明では理解できず調べていたところ、こちらのサイトにたどり着きました。

まだ理解はこれから・・・ですが、丁寧で分かりやすい解説に心が明るくなっています。
ベストティーチャー、納得です。



Posted by rui at 2011年08月14日 03:52
ruiさんのコメントに、私も心が明るくなりました。
このように活用していただき、コメントをいただけると大変うれしいです。
どうもありがとうございます。
Posted by 長尾大志 at 2011年08月14日 17:17
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