2018年07月31日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説21・院内肺炎/医療・介護関連肺炎5・エンピリック治療2

■ 重症度が高い、または耐性菌リスクが高い場合 de-escalation単剤治療

医療・介護関連肺炎の場合、敗血症がある、または、A-DROPが3項目以上(重症度が高い)、もしくは耐性菌リスク因子が2項目以上の症例。

院内肺炎の場合、敗血症がある、またはI-ROADで2項目以下かつ肺炎重症度規定因子が該当する中等症以上群と考えられる、あるいはI-ROADで3項目以上、もしくは耐性菌リスク因子が2項目以上の症例が当てはまります。

重症度が高い、すなわち治療失敗が許されないが耐性菌のリスクは少ない、または重症ではないけれども耐性の恐れが強い、そういう群には初期治療から耐性菌(MRSA、緑膿菌、ESBL産生腸内細菌など)をある程度カバーする必要があります。→de-escalation単剤治療

単剤治療に選択するのはβラクタム系抗菌薬としてペニシリン系薬(タゾバクタム・ピペラシリン)もしくは第4世代セフェム系薬、それからカルバペネム系薬、ニューキノロン系薬いずれかの単剤を用います。


■ 重症度が高い、かつ、耐性菌リスクが高い場合 de-escalation多剤治療

医療・介護関連肺炎の場合、敗血症がある、または、A-DROPが3項目以上(重症度が高い)、かつ耐性菌リスク因子が2項目以上の症例。

院内肺炎の場合、敗血症がある、またはI-ROADで2項目以下かつ肺炎重症度規定因子が該当する中等症以上群と考えられる、あるいはI-ROADで3項目以上、そしてかつ耐性菌リスク因子が2項目以上の症例です。ああややこしい。フローチャートがいるかなあ…。

敗血症がある(もしくは重症で)、かつ耐性菌のリスクが高いと判断された群は、よりリスクが高い、これはもう治療を失敗するわけにはいかない。初期治療で勝負をつけなくてはならない。そういう群では広域抗菌薬をさらに併用して治療をします。→de-escalation多剤治療

多剤の場合はペニシリン系薬、第4世代セフェム系薬、カルバペネム系薬をベースにしてニューキノロン系薬、またはアミノグリコシド系薬を併用する、というやり方が勧められています。

個人的には、より緑膿菌の存在を疑う場面(これまでに痰で検出、広域抗菌薬使用歴など)ではアミノグリコシド系、レジオネラを疑うような高齢者施設での集団感染とか温泉や浴場などで発生した、などの場合にはニューキノロン系薬を優先的に選択するかなあ、という感じです。

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posted by 長尾大志 at 19:07 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月30日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説20・院内肺炎/医療・介護関連肺炎4・エンピリック治療

院内肺炎/医療・介護関連肺炎でも喀痰グラム染色の重要性は変わりません、イヤむしろ市中肺炎よりも重要かもしれませんが、だがしかし、そういう、ADL低下が見られたり、誤嚥があったりする症例ほど、痰の喀出が出来ない、脱水で痰がない、侵襲的検査が難しい、などの理由で、エンピリック治療の出番が多くなってくる現実があります。しっかりとエンピリック治療の考え方を学びましょう。

■ 重症度が高くないと判断され、かつ、耐性菌リスクが低い場合

医療・介護関連肺炎の場合、敗血症がなくて、A-DROPが2項目以下(重症度が高くない)で、さらに耐性菌リスク因子が1項目以下の症例。

院内肺炎の場合、敗血症がなくて、I-ROADで2項目以下かつ肺炎重症度規定因子に該当せず軽症群と考えられ、さらに耐性菌リスク因子が1項目以下の症例が当てはまります。

こういう症例群では、まず狭域スペクトラムの抗菌薬を投与し、無効な場合広域に変更するescalation治療による初期治療が推奨されます。

主な標的は市中肺炎と似ていて、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、口腔内の連鎖球菌、クレブシエラ、モラクセラなどです。

これらの菌に対するエンピリック治療として推奨されるのは、ペニシリン系薬ではスルバクタム・アンピシリン、セフェム系では第三世代のセフトリアキソン、またはセフォタキシムです。

市中肺炎とは異なり、あまり非定型肺炎(特にマイコプラズマ肺炎)が単独で起こるとは想定されていませんが、非定型肺炎の可能性が考えられる、あるいはβラクタム系薬へのアレルギー歴を有する場合には、キノロン系のレボフロキサシンがガイドラインでは推奨されます。

医療・介護関連肺炎で、外来治療が可能な場合、内服薬で細菌性と非定型肺炎の両者をカバーできるような、βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(アモキシシリン・クラブラン酸またはスルタミシリン)もしくはセフトリアキソンに、マクロライド系薬(クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)を併用する、もしくは単剤でレスピラトリーキノロン(ガレノキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシン)を選択します。

外来で注射薬治療を行う場合は、1日1回投与が可能なセフトリアキソンやレボフロキサシンを選択します。

なお、レボフロキサシンは嫌気性菌への抗菌活性が不十分なので、誤嚥性肺炎や肺膿瘍・肺化膿症といった嫌気性菌感染の可能性が高いと考えられる症例では、クリンダマイシンやメトロニダゾールの併用を検討する、とされておりますが…。

個人的には、エンピリックの現場では非定型病原体をそれほど重要視する必要はないと思っていて、非定型肺炎を疑うような症候が少なければ、マクロライドの併用やキノロンは不要ではないかと思っております。

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posted by 長尾大志 at 16:13 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月29日

6年生アドバンスコース感想・最後

アドバンスコースも終わりましたので、感想もこれにて終了しようと思います。最後だから、というわけでもありませんが、3人分をまとめてご紹介します。

(1人目ここから)
 外来は、先生からのご助言を頂きながら医療面接、検査、説明、薬の処方までの一通りの流れを実際にさせて頂き、おもしろさと同時に責任の重さも感じて緊張しました。私の勉強不足ではありますが、どのような検査をすべきか、どの薬を処方すべきか、自信をもって決定できることはなかったと感じました。もっと勉強をしなければいけないと思いました。検診でレントゲンの異常を指摘されて来院された患者さんへの説明では、異常がなかったから良かったと終わるのではなく、次回の検査でまた異常を指摘されたら病院へ行くこと、ついでに禁煙も強くオススメすることなど、本を読んで勉強しているだけでは学べないことがまだまだたくさんあることも知りました。それについては、実際に働き出してからの課題にしたいと思います。
 研修医の先生について病棟実習した際は、いろいろ説明して下さり勉強になりました。胸水穿刺を見せて頂きましたが、もう少しいろいろな手技を見る機会があればうれしいです。
 各先生方が講義をして下さり、とても勉強になりました。研修医レベルの高度な内容の講義もありますが、呼吸器専門の先生方に教えて頂ける貴重な機会であると思います。国家試験の勉強の理解を助けるような基本的な病態生理などについてご指導頂けるとありがたく思います。実習3週目に長尾先生が国家試験の問題を解説して下さった講義は、記憶に残りやすくとても勉強になりました。
 お忙しい中ご指導頂き、誠にありがとうございました。
(ここまで)

(2人目ここから)
3週間、アドバンスコースでお世話になりました。
思い返せばあっという間で、とても中身が詰まった濃い実習だったと思います。
びわこ闘魂外来では実際の患者さんに問診し、5回生の時にはなかった治療方針を立てるところまで自分たちで進めることで非常に勉強になりました。実際にはこれを一人で、しかももっと短時間でこなさなければいけないとなると、より深い知識と経験が必要になると強く感じました。
5回生と一緒に行った入院患者症例検討や画像読影も、一人一人の患者さんにたくさんの情報が詰まっており、学ぶべきことがたくさんありました。長尾先生による解説も大変わかりやすく、読影も少し自信がつくようになりました。
他の先生方による講義も非常に参考になるものばかりで、COPDや肺癌、気管支喘息の治療、感染症対策など幅広く学ぶことができました。
研修医の先生について入院患者さんの診察を行った際には、血液ガスもとらせていただくことができ、非常にいい経験となりました。
とても勉強になる、充実した3週間を過ごすことができました。本当にありがとうございました。
(ここまで)

(3人目ここから)
呼吸器内科に興味があったため希望して過ごした3週間であったが、悪性腫瘍、肺炎、間質性肺炎、COPD、胸膜炎、気胸、副鼻腔炎など多岐にわたる疾患を患者さんから学ぶことが出来て、とても有意義な実習となったと思う。
闘魂外来では初診の患者さんを診させていただいた。ただお話を聞いてカルテに残すだけなら他科でも数回行ったことはあったが、自分たちで問診や診察を行い、どのような検査をオーダーすべきか考え、それらを踏まえて診断し治療はどうするかというところまでした経験が少なかったので貴重な経験をさせていただいた。外来診療で感じたこととして、特に最初はできるだけOpen questionが望ましいとOSCEで学んでいたが、患者さんによってはその時思いついたことをだらだらと話してしまい要領を得ないことがありうるので、そういった時は医師側がいい意味で話を遮りながら、誘導するような形で質問して話を聞いていくのがいいときもあるのではないかということがある。医師になってからも日々反省しながら少しでも質の高い診療を行えるように学んでいきたいと思う。
また5回生に説明する形で外来振り返りの時間もあったが、自分たちが関わった症例を検討することで、やりっぱなしにならず良い復習が出来たと思う。
黄瀬先生、山口先生、大澤先生によるミニレクチャーは国試につながるものから、研修医になってから覚えておいたほうがいい内容まで幅広く勉強させていただけたのでいただいた資料などは残しておいてこれからの勉強にも活用していきたい。
呼吸器内科の実習では特にX線画像を読めるようになることと抗菌薬の使い方について勉強することを目標にしていたが、X線画像についてはカンファレンスやレクチャーで多くの画像を読むことで少しは慣れてきて、苦手意識がなくなりむしろ少しだけではあるが自信を持って読むことができるようになった。抗菌薬については事前に教科書などで少し勉強していたのだが、その甲斐あってか他の人より抗菌薬について理解が深められたと思う。外来患者や受け持った入院患者、それ以外の入院患者はカンファレンスで見ることができたし、レクチャーでも教わる機会があったし、どうしてこの抗菌薬を使うのかなど疑問点があればどの先生に聞いても快く教えてくださったのでとても充実した実習を送ることができた。
お忙しい中、国試の過去問を検討する時間を作っていただくなど私達のわがままにも柔軟に対応してくださり、3週間ご指導いただき有難うございました。
(ここまで)

ウチでやっていることの一端の、ご紹介になれば幸いです。

ここ数年、このアドバンスコースで、今後の臨床実習のあり方を探る試みを行っています。ある程度呼吸器に興味を持っている人々が来てくれている(建前な)ので、少しずつ要求水準を上げてもいいかな…?と、学生さんの反応を見ながら取り組む、してもらうことの強度を上げていっておりましたが、今年は闘魂外来もきっちりとやってもらえましたし、なかなか学びの多い実習になったかと思います。で、やっぱり、実習って、患者さんに触れて、話して、考えてナンボだなあ、と痛感しました。

昨年までだとここで5年生も終了し、学生さんたちは夏休み、教員もつかの間の休息、となるのですが、今年はあと2週間、5年生の臨床実習が続きます…。いつまでやんねん、との5年生の心の?声が廊下に響き渡ります。

ウチの臨床実習は、教授1人に2週間割り当て、というシステムで、教授が増えるごとに2週間実習が増え、学生さんの夏休みが減ることになります。2年前に神経内科学講座が独立して新教授が誕生され、2週間が夏休みが減り、実習になりました。そして今年は呼吸器内科が診療科として呼吸循環器内科から独立、新教授が誕生しましたから、来年度からはやはり…!?

これまで15年間、学生さんからずっとずっと「呼吸器と循環器の実習を分けてほしい」「呼吸器と循環器で2週間では短すぎる、時間がない」といわれ続けてきましたが、ようやくその声に応えることができるようになるのではないでしょうか。

これまで5年生の実習は、循環器内科と合わせて2週間で、タイムテーブルが入り乱れていて、病棟の移動がある関係で、全く自分の理想とは異なる現状になっておりましたが、呼吸器内科が独立したあかつきには、改めて、臨床実習の新たなる形を作っていくことになるでしょう。

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posted by 長尾大志 at 20:22 | Comment(0) | 先輩研修医・学生さんの感想

2018年07月28日

アドバンスコース、終了!

昨日で無事に、6年生のアドバンスコースが終了しました。例年でしたらここで5年生も終了し、学生さんたちは夏休み、となるのですが、今年はあと2週間5年生の臨床実習が続きます…。いつまでやんねん、との5年生の心の?声が廊下に響き渡ります。

アドバンスコース、後期の面々とは最後に写真を撮ることができました。

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セルフタイマーで撮ったら、めっちゃ油断した顔で撮られました…。
感想をもらった前期の面々とは写真撮影できず…ちょっとちぐはぐですが…前期の感想を続けます。

(感想ここから)
 今回、呼吸器内科で学ばせていただいた3週間はとても充実したものとなりました。問診の取り方を学びたいと思っていたので、初週に外来実習があり嬉しかったです(緊張しましたが…)。長尾先生にたくさんのことを教えていただきながら、自分たちで問診を取ったり、診察したり、検査・治療を考えたり、患者さんに説明したり…。去年の実習よりも深く一つ一つの症例に向き合えて学びも多かったと思います。

 これまで、主訴・現病歴・既往歴・家族歴・生活歴など一通りのことを聞く練習をする機会はありましたが、患者さんとお話する中で、もう少し詳しく聞き出したり、関連する事柄について追加で質問したりすることを今回特に学ばせていただきました。やはり、問診で得られる情報は思いの外たくさんあるのだなと実感しました。また、患者さんの主訴に耳を傾けてそれに対して何か声をかけていくことも大切なのだなと思いました(患者さんはその主訴の解決のために来院されたはずなので)。

 いわゆるかぜ症候群の概念についても深く学ぶ時間があり、大学病院でもプライマリケアについてこんなに詳しく学べるのだなと感じました。知っているようで知らないことがたくさんあり、きちんと定義を知ることで見えてくる世界はまた違ってくるのだなと思いました。

 診察についてもいろいろなことを教わりましたが、呼吸数については特に印象に残っています。患者さんの状態の深刻さを反映しうる呼吸数を、この先救急の現場で働くときも絶対忘れないようにします。呼吸音については回診時などにも病棟患者さんのラ音や呼吸音減弱を何度か聞かせていただき、正常な患者さんと比べることもでき、よくわかりました。もっと聞いて慣れていきたいなと思います。

 検査はなぜその検査をするのか、その検査で何がわかるのかについて考えてオーダーすることが大切なのだと知りました。何をするにしても一回自分で考える癖をつけることが大切なのだと知りました。レントゲンも何度も目にする機会があり、3週間経つとだんだん慣れてきました。長尾先生、何かの話題が出ると、すぐに典型的な画像を出してくださりありがとうございました。そして、この3週間で肺炎について学ぶ機会があり、嬉しく思います。喀痰塗抹は何度も見せていただいてすごく印象に残っています。どんな菌がいるかで抗菌薬の使い方が変わってくるのだということを実感しました。大澤先生の感染症の講義は高度で難しかったですが、血液培養のボトルを実際に持ってきていただいたりして、イメージがつかめました。感染症が奥深くて学ぶことがたくさんあるなと感じました…。

 また、長尾先生に、治療について、特に末期の患者さんに対して、医師が方向性を示していくことが時には大切なのだと教わりました。やはり、患者さんやご家族がどのように感じていて、医師としてそれに対し何かしてあげられることはないか考えていくことは重要なことだと感じました。

 また、山口先生の講義では国試の問題を実際に解くことで、するべきこととしてはいけないこと(禁忌)といった視点で臨床問題をみることができました。長尾先生にも国試の過去問を解説していただき、勉強になりました。研修医の先生につく機会がありましたが、とても優しくいろいろなことを教えていただき、よかったです。黄瀬先生にも喘息・COPDといったメジャーな疾患について症例検討という形で講義していただき勉強になりました。中野先生の時にはCOPDについてプレゼンをしましたが、自分の担当した部分についてすごく印象に残っており、分かりやすいパワポを作る練習にもなり、よかったです。

 呼吸器内科の先生方には優しくたくさんのことを教えていただき、とても感謝しています。3週間お世話になり、本当にありがとうございました。
(感想ここまで)

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posted by 長尾大志 at 20:05 | Comment(0) | 先輩研修医・学生さんの感想

2018年07月27日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説19・院内肺炎/医療・介護関連肺炎3・escalation治療とde-escalation治療

I-ROADで2項目以下なら軽症〜中等症、さらに肺炎重症規定因子で該当がなければ軽症群(A群)、該当があれば中等症群(B群)とします。I-ROADで3項目以上該当する症例は重症群(C群)とします。

で、いざ抗菌薬を選択するわけですが、大きい方針として2つの方向性があります。

@escalation治療
escalationはそもそも「(段階的)拡大」、という意味です。抗菌薬治療においては、まず狭域抗菌薬から開始して、段階的に広域なものに替えていくようなやり方をいいます。

肺炎で、敗血症がなくて重症度も低い場合には、原因菌はグラム陽性球菌中心に、せいぜいH.influenzaeあたりを想定して、まず狭域の薬剤を使用します。そこで全身状態の改善があればよし、改善が見られない場合に、必要に応じて広域の薬剤への変更を考慮するという治療をescalation治療といいます。

Ade-escalation治療
de-escalationはescalationの逆、すなわち「(段階的)縮小」というような意味です。最初に広域抗菌薬から開始して段階的に狭域にするものをいいます。

肺炎で、敗血症があるとか重症度が高いという場合、または耐性菌のリスクが高い場合には、グラム陰性桿菌、緑膿菌あたりまでカバーする広域の薬剤で初期治療を開始して、全身状態の改善を確認した上で培養が判明した後に、可能であればより狭域の薬剤への変更を考慮する治療をde-escalation治療といいます。

重症であれば、初期治療の効果がなければそのまま命に関わる恐れがあります。そして耐性菌であれば、最初から広域でないと効かない可能性が高い。そういう状況ではde-escalation治療が選択されます。


市中肺炎に比べると耐性菌のリスクが高い院内肺炎/医療・介護関連肺炎ですが、耐性菌のリスク因子としては、
  • 過去90日以内に経静脈的抗菌薬の使用歴

  • 過去90日以内に2日以上の入院歴

  • 免疫抑制状態

  • 活動性の低下:PS≧3、歩行不能、バーセル指数<50、経管栄養または中心静脈栄養法、など

→これらのうち2項目以上で耐性菌の高リスク群である、とします。

ちなみにバーセル指数とは、介護の世界で使われるADL評価法で、食事、移動、整容…など10項目について、日常生活の中でできる度合いを評価するもので100点満点です。採点方法は結構細かいので、ご興味のある方はご自分で検索頂ければ幸いです。

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posted by 長尾大志 at 17:25 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月26日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説18・院内肺炎/医療・介護関連肺炎2・治療の場所・院内肺炎は??

それをふまえて、HAP/NHCAPでは、まず最初に誤嚥性肺炎のリスクや、終末期状態であるかどうかの判断を行います。

もしそのいずれか、またはいずれもに当てはまる場合、患者さん本人やご家族とよくよく相談した上で、ご本人の意思やQOLを尊重した、患者さん中心の治療、ケアを行います。治療開始した後でも、継続的に患者さん本人やご家族の意思を確認し、状況に応じて治療方針を変更できることを説明しその機会を保証する、とされています。

治療撤退の流れを明文化した、というところですね。

そういう状況ではない、あるいは終末期だけれどもご本人が通常の治療を望まれる場合やご本人の意思が確認出来ない場合(あくまで「ご本人の」意思が重要です)、通常の治療に進みます。

通常の治療にあたっては市中肺炎同様、最初に敗血症の有無と重症度を確認します。敗血症疑いの有無はqSOFAで判定します。それから重症度、これも市中肺炎と同様、医療・介護関連肺炎でもA-DROPですが、院内肺炎ではI-ROADになります。

I-ROAD
  • I:immunodeficiency(悪性腫瘍、または免疫不全状態)

  • R:Respiration(呼吸)SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する。

  • O:Orientation(意識障害)

  • A:Age(年齢)

  • D:Dehydration(脱水または乏尿)


A-DROPとI-ROADは、ほとんど同じ項目なのに「全く違います」みたいな顔をしているところが、ちょっと個人的には気に食わないところです。そもそもA-DROPは入院させるかどうかを決めるのにも使うわけですが、院内肺炎の場合入院させるもクソもない(元々入院してる)わけですから、A-DROPを使わなくていいよね、元々の免疫状態で予後を占いましょうね、と理解しておきましょう。

医療・介護関連肺炎の場合はA-DROPで(市中肺炎同様に)入院適応、治療の場を決め、さらに耐性菌リスクを勘案して治療薬を決めます。

院内肺炎ではI-ROADに加えて肺炎重症度規定因子として
  • CRP≧20mg/dL

  • 胸部X線写真で陰影の広がりが一側肺の2/3以上

の項目を使い、重症度判定を行います。

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posted by 長尾大志 at 17:59 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月25日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説17・院内肺炎/医療・介護関連肺炎1・要するに市中肺炎以外は同じことになった

これまで日本呼吸器学会は、肺炎診療ガイドラインを三つのカテゴリー(市中肺炎CAP、院内肺炎HAP、医療・介護関連肺炎NHCAP)に分けてガイドラインを作成してきました。

ところがその後、わが国特有の問題が明らかになってきたために、この分け方はいかがなものか、という意見が出てきたわけです。一つは海外のガイドラインと比較したときに、一致しないところ、齟齬が出てきたのです。

それは、一つは医療制度の違いによって、対象とする患者さんの属性が異なるということ、もう一つは終末期医療において、個人の意思をどういう風に扱うかという、文化的な側面を含む問題になります。

まず院内肺炎でいうところの「病院」の定義自体が、彼我ではかなり違うのです。日本の場合は急性期のみならず、亜急性期と慢性期、及びリハビリというのも病院に入院して行います。一方で欧米では、病院というのは急性期の入院診療を行う施設であって、それ以外の医療行為や介護は病院でなくて療養施設でなされます。

ですから日本の院内肺炎、というものには欧米であれば院内肺炎から医療ケア関連肺炎といわれるものも含まれます。そして日本の医療・介護関連肺炎は米国でいうと医療ケア関連肺炎と市中肺炎も含まれますので、各々のカテゴリーに含まれる患者さんの属性が日本と欧米で異なっているということになります。そうなると、例えば論文を書くときにこちらのカテゴリーとあちらのカテゴリーの定義がずれてしまって都合が悪いわけです。

結局せっかく米国の医療ケア関連肺炎にすり寄せたつもりで 作った医療・介護関連肺炎なんですが、あまり役に立たなかった、そういうことで分ける意味がないよね、と院内肺炎に統合されたような次第です。

もう一つの問題は、終末期の肺炎をどう取り扱うか、というものです。アメリカでは、個人の意思に従った医療が事前指示書によって行われています。強力な治療を望まない場合には、個人の意思に従って緩和的なケアが行われる場合が多い。その場合、肺炎ガイドラインの対象外になるわけです。

ところがわが国では、個人の意思の確認や表出が行われるということは稀で、診療の方針は多くの場合医師が決定することになります。そうすると終末期の肺炎だと状態が悪いことが多く、カテゴリーとしては重症の肺炎ということになってしまって、強力な治療を行う結果となってしまいます。

これらの問題があることから、色々議論があり、以下の方針が決まりました。

1.疾患の末期や老衰などの、不可逆的な死の過程にある終末期の患者が含まれる院内肺炎と医療介護関連肺炎を、一つの診療群として市中肺炎と分けて診療のプロセスを示す。

2.院内肺炎および医療介護関連肺炎の患者では、最初に疾患末期あるいは老衰などの不可逆的な死の過程にある終末期の患者を鑑別する。

この2番目が、今回の肺炎診療ガイドラインの一つの目玉?となっています。終末期を終末期として取扱い、強力な診療をしないという選択肢を設けたわけです。

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posted by 長尾大志 at 21:49 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月24日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説16・市中肺炎15・抗菌薬治療が無効の時2

抗菌薬が無効の時、感染性の病態を整理するために、細菌側の要因、宿主側の要因、薬剤側・医療側の要因に分けて考えます。

細菌(病原体)側の要因
  • 抗菌薬がカバーしていないような病原体|ウイルス、真菌、抗酸菌

  • 非定型病原体|マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジア

  • 抗菌薬への耐性菌|MRSA、PRSP、BLNAR、緑膿菌、ESBL産生菌

  • 改善に時間のかかる病原体|ノカルジア、放線菌

  • 日和見病原体等による入院後の二次感染

  • 重症感染症による急速な病状の悪化|敗血症性ショックや劇症型肺炎



宿主(人間)側の問題
  • 抗菌薬移行不良な病巣の形成|膿胸、肺膿瘍、ブラ内感染

  • 肺外感染巣の形成|心内膜炎、骨関節炎、カテーテル感染、脳髄膜炎

  • 気道ドレナージの障害|中枢型肺癌、気道異物、反復性の誤嚥、去痰不全、慢性呼吸器疾患(気管支拡張症、副鼻腔気管支症候群)

  • 基礎疾患による全身免疫機能の低下|HIV感染症、免疫抑制薬投与、血液系悪性腫瘍

  • 医療機関受診の遅れによる重症化



薬剤側・医療側の要因
  • 抗菌薬の不適切投与|投与量不足、投与経路や回数が不適切

  • 治療介入開始の遅れによる重症化

  • 抗菌薬に由来する有害事象|薬剤熱


このうち少しの努力で克服できるのは、抗菌薬の不適切投与です。いまだに投与量が足りない、という現場を見かけます…喝!(?)

それと当初効いていたのに、途中から熱が出た、抗菌薬変更!!…というときに、思い出して頂きたいのが「薬剤熱」。当初効いていたのであれば通常、そのイベントは制御できているはずで、抗菌薬変更が必要、という場面は多くありません。比較的徐脈、比較的元気、比較的CRP低値の「比較3原則」を参考に、薬剤熱を正しく疑いましょう。

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posted by 長尾大志 at 19:14 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月23日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説15・市中肺炎14・抗菌薬治療が無効の時1

抗菌薬が無効な時、どう考えるかは、市中肺炎だけでなく院内肺炎、医療介護関連肺炎にも共通する課題であります。

肺炎における治療失敗(無効)の原因というのはまず第1に診断の誤り、そして診断があっていても治療がうまくいかない事情?がある、などです。初期治療不応時の鑑別診断(肺炎と紛らわしい疾患)として挙げられている非感染性の病態としては、
  • 心不全

  • 尿毒症肺

  • 肺塞栓

これらは病歴とエコーやCTなどで鑑別が可能です。この中で一番多いのは心不全ですが、肺炎に合併しているという場合もありしばしば治療が難しいこともあります。それ以外に、診断にはもう少し情報が必要で、場合によって気管支鏡などを考慮すべきものとして、
  • 間質性肺炎

  • 好酸球性肺炎

  • 器質化肺炎

  • 過敏性肺炎

  • 薬剤性肺障害

  • 放射線肺臓炎

  • ARDS

  • 肺胞出血

  • 肺癌

  • リンパ増殖性疾患

などが挙げられています。それはそうなのですが、だからといって、肺炎が治らない→呼吸器内科でよろしく、というのも少し違う気がします。

過敏性肺炎、薬剤性肺障害、放射線肺臓炎、それにARDSの一部は病歴でわかりそうですし、癌性リンパ管症やリンパ増殖性疾患だったらHRCTで見当が付く。診断に気管支鏡が必要なのは好酸球性肺炎と肺胞出血あたり…となれば、出来ることはありそうですね。

しかも、実は初期治療不成功の原因、非感染性因子は15〜25%で、感染性因子が40〜60%と感染性因子の頻度が高いのです。感染であったのに抗菌薬が効かなかった、その原因は…。

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posted by 長尾大志 at 21:41 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月22日

6年生アドバンスコース感想2

昨日に引き続き、感想を

(感想ここから)
今回、クリニカルクラークシップのアドバンスコースで呼吸器内科を回らせていただき、3週間通して非常に勉強になり、有意義な時間となりました。3週間で、1週ごとに外来、病棟業務、国家試験対策と様々なことをしていただきました。それぞれ異なることが勉強になりました。

 外来では、問診から身体診察、検査のオーダー、結果の解釈と患者さんへの説明・教育、薬剤の処方まで、ただの外来見学ではなく、1人の患者を最初から最後まで自分で診るという、学生ではなかなかできないことができました。その中でも、問診しながら鑑別疾患を考えつつ欲しい情報をとっていくことの難しさは、国試勉強の症例問題とは全く違うものだと感じました。検査のオーダーでも、とりあえず血液検査やCTなどをしてしまいがちでしたが、本当に必要な検査はなにかを考えて、余分な検査をしないこと、必要な検査を追加することは想像以上に難しかったです。患者さんへの説明・教育といったことは卒業して働きだしてからは必須の能力であり、まだまだだと感じるところでした。

 病棟業務では、研修医の先生について回診などをさせていただきました。病棟では1週間しか患者さんを診ていませんが、それでも1週間で患者さんの体調や精神状態、検査結果が変化していき、それに対して先生が原因を考え、すぐさま対応するスキルは、大変参考になりました。特に、癌疑いで入院され検査後、胸痛を訴えた患者さんの症例では、入院してから、体調面の変化、それに対応する検査結果の変化とそれへの処置、また、患者家族に対する説明などを順を追って最初から見学できたので非常に勉強になりました。研修医の先生も丁寧に教えて下さって、疑問点も大変聴きやすかったです。欲を言えば、もう少し長く同じ患者さんを継続して診てみたかったと感じました。

 その他にも、国試対策の授業や感染症や抗菌薬に対する講義があり、国試勉強という意味でも非常に勉強になりました。前期で学んだことを後期に活かせるようにします。
(感想ここまで)

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posted by 長尾大志 at 17:51 | Comment(0) | 先輩研修医・学生さんの感想

2018年07月21日

6年生アドバンスコース感想

現在、1年で一番しんどい、いつもの5年生に加えて6年生がやってくる、アドバンスコースの時期を迎えております。

毎年毎年、「今年で最後にしたい」とか「もっと違ったやり方で」とか思いながら、結局あまり変えずにずるずると続けております。毎年この時期の記憶はほとんどありませんし、全く他の仕事は手につきませんね。

余所のやり方を見ていると、もっとエレガントに、教員が汗をかかずに、学生さんが主体的にやっているように見えて、彼我の違いに思いをいたさずにはおれません。

まあ、学生さんを主体的に巻き込む?には、カリキュラムの根本的な変更が必要ですし、そういう意味では来年には、呼吸器内科が正式に循環器と分離することで、根本的な改革が可能かもしれません。「今年こそは」今年で最後かもしれません。

それとやはりこの時期ですよね。この時期に、もう一度、5年生と同じ?ような?ことをやらせて、「主体的にやれ」もないもんだ、といわれれば確かにその通り。うちでは5年生と、一見同じようなことですが、濃度と密度を変えているつもり。一応、呼吸器内科を「希望して」来ている人たちですから、呼吸器内科の醍醐味を存分に味わってもらいたい、という精神、熱意でやっております。

そんなこちらの思いは、伝わっているのでしょうか?前半の参加者の皆さんから感想を頂いております。

(感想ここから)
私がこのアドバンスクリクラで一番勉強になったのは、びわこ闘魂外来です。問診票を元に、ある程度疾患に予想をつけながら問診を行い、そこから必要な検査、治療まで学生自ら考えることで、より一層疾患の理解も深まりました。そして何より、来年から医師として働くうえでとてもいい練習になりました。特に印象に残っているのは、副鼻腔炎の症状の多彩さです。教科書上でしか勉強してきていない私にとって、副鼻腔炎はかなりの圧痛を伴う炎症疾患でしたが、長引く咳や痰でも鑑別に上がることを実際の患者さんと照らし合わせることでより深く印象に残りました。

また、病棟実習では研修医の方が処置や手技を見学、そしてやらせてくださいました。特に血液ガスを実際に取らせていただき、非常に勉強になりました。

このように、教科書上での勉強ではどうしても身につかない、覚えられない私にとって、実践的であった呼吸器のアドバンスクリクラは非常に有意義なものとなりました。

非常にお忙しい中、私たちの指導のためにお時間を割いていただき本当にありがとうございました。この経験を生かしてこれからもいい医師になれるように精進していきます。
(ここまで)

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posted by 長尾大志 at 23:36 | Comment(0) | 先輩研修医・学生さんの感想

2018年07月20日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説14・市中肺炎13・治療終了時期・退院時期

ケンカや戦争を始めるときには、落としどころを決めておく、終わりを決めておかないとずるずると泥沼にハマりますね。それと同じ?で、感染症治療を開始する際にはいつまで続けるか、治療開始時に決めておくのが理想です。

というのも、抗菌薬をダラダラ使う=耐性菌を増やす、ということになるからです。抗菌薬使用期間が延びるほど、体内でその抗菌薬が効かない菌が生き残り、効く菌が死に絶えていきます。菌の世界もパワーバランスがあり、一度バランスが変わるとなかなか元に戻らず、腸内細菌叢などの菌が「効かない菌=耐性菌」に入れ替わっていくのです。従って、抗菌薬は、できる限り大量に、短く使う、これが耐性対策の基本です。

以前にも書きましたが、最初に使う抗菌薬がその感染症に「効けば」、もうその感染症は制圧したと見做せる、すなわち、早期に「効果あり」と判定すれば、大体同じようなシチュエーション(重症度、菌種)で同じような日数(治療期間)で収束させることができる、と考えます。


市中肺炎治療期間の目安(初期治療が奏功している場合)

  • 肺炎球菌:菌血症がなければ解熱後3〜5日間(最低5日間)
    菌血症を併発していれば10〜14日間

  • ブドウ球菌や嫌気性菌による壊死性肺炎:14日間以上

  • レジオネラ・ニューモフィラ:7〜14日間

  • 緑膿菌:10〜14日間

  • その他の市中肺炎:最低5日間かつ2〜3日間平熱が続くことを確認して治療終了

  • 肺化膿症、胸膜炎、膿胸を併発している場合、基礎疾患による難治化を認める場合には上記より長期間投与するべき、とされています


最終的に抗菌薬投与を終了する判断は、(スイッチ療法の導入基準と同じ)臨床的な軽快状態を満たし、さらに
  • 白血球正常化

  • CRP が最高値の30%以下

  • 胸部 X 線の明らかな改善

などから総合的に判断する、とされていますが、胸部陰影の改善には時間を要する症例がありますし、 CRP に関しても感染症以外の原因で軽快しない症例があるので、あまりこれを厳密に守ると、ダラダラと抗菌薬を続けることになってしまいます。

個人的には、普通の免疫力がある普通の肺炎で、早期に「効果あり」であれば、当初の設定期間でビシッと止めていいと思います。

退院の時期については、ガイドラインでは「理想的には」抗菌薬終了後の観察期間を4〜10日間程度設けて再発がないことを確認後退院、と書かれていますが、現実的にそうやってベッドを占有することはかなわないでしょう。通常は点滴抗菌薬が終了したら退院、ということになるでしょうね。

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posted by 長尾大志 at 18:53 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月19日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説13・市中肺炎12・スイッチ療法

当初注射薬による治療を開始しても、患者さんの状態が改善すれば、つまり
  • 循環動態が安定し、

  • 臨床症状が改善し、

  • 経口摂取が可能で、

  • 消化器機能が健全であれば

内服抗菌薬へのスイッチが可能、とされています。スイッチ療法導入の目安は本邦でいくつかの基準が検討されています。1つは

  • 呼吸器症状(咳や呼吸困難など)の改善

  • CRP<15mg/dL

  • 経口摂取の十分な改善

  • 体温が少なくとも12時間以上38℃未満であること

(柳原ら 2009)

の4項目で、もう1つは

  • 咳および呼吸状態の改善

  • CRP<10mg/dL(初診時CRP<10mg/dLの場合、CRP減少を確認)

  • 白血球数<10,000/μL

  • 体温が16時間以上37℃未満であること

(内山ら 2003)

の4項目です。

一応数値基準もありますので、参考にして頂ければと思います。注射薬を使っている間は退院が難しいものですから、内服へのスイッチは入院期間の短縮につながるでしょう。

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posted by 長尾大志 at 18:07 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月18日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説12・市中肺炎11・臨床評価法

抗菌薬治療を開始したときにそれが「効いている」か「効いていない」かを判定、評価する方法を考えましょう。

そもそも肺炎になる、というか、感染症になる、ということは、ある菌(通常は1種類)が、制御できないほど増えて、臓器にダメージを与える、というイメージです。誤嚥性肺炎で口腔内の常在菌(普段から仲良くしている仲間たち)がそれぞれ仲良くいっしょに増えてくる、という場合を除いて、排他的に1種類の菌がドカンと増えるのが感染症です。

ですから、最初に使う抗菌薬がそいつに「効けば」、もうその感染症は制圧したも同然、というのが基本的戦略の元になる考えです。すなわち、早期に「効果あり」と判定すれば、そのまま抗菌薬を使っていけば肺炎は治るでしょう、と考えるわけです。

抗菌薬の早期の効果判定としてガイドラインで紹介されているのは、新規抗菌薬の臨床試験における評価法ですが、臨床的にも客観的な効果判定法として使用できます。評価のタイミングは薬剤投与開始から3日後で、判定の項目は
  • 体温(発熱)

  • 咳嗽

  • 喀痰の量

この3項目中2項目以上が改善していれば、改善または改善傾向ありとします。

その一方で、みんなが大好きな、炎症所見(白血球数やCRP)及び胸部X線の陰影については評価をしません。これは大事です。白血球数やCRPは治療開始時に低値であることもあり、胸部X線の陰影は、特に高齢者ではなかなか改善が見られないことも多いものですから、この指標で評価をすると誤った評価になる可能性があるわけです。

なお治療終了時(End of Treatment)、治癒判定時(Test of Cure)に臨床効果を判定するための症状としては、

  • 咳嗽

  • 喀痰の量

  • 呼吸困難

  • 胸痛

  • 喀痰の性状

  • 胸部のラ音

の6項目が挙げられていますが、実際には呼吸数を含めたこれらの症状は、早い時期から改善してくることが多いものです。これらはすべて「患者さんのところに行く」ことで得られる情報ですから、積極的に患者さんのところに行くようにしましょう。

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posted by 長尾大志 at 21:19 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月17日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説11・市中肺炎10・集中治療室入室治療

集中治療室で全身管理が必要となるような、重症肺炎の代表的な原因菌は肺炎球菌とレジオネラです。ですが、エンピリックにいきます、というときにはその2つにターゲットを絞るのは危険でしょう。

重症、すなわち治療失敗が死を意味する、そういう場面においては、頻度はいささか低くても、緑膿菌を含むグラム陰性桿菌をもターゲットに含めた、広域抗菌薬を使うというのもやむを得ないところです。

ただし抗菌薬を使用する前に、必ずあらゆる培養をとる(喀痰、血液、尿など)。そうして得られた菌を確認してde-escalationをできるように準備する、ということが大事です。

エンピリック治療として挙げられるのが以下の5つの薬剤(の組み合わせ)です。いずれも注射薬になります。

  • A法|カルバペネム系薬(メロペネム、ドリペネム、ビアペネム、イミペネム・シラスタチン)またはβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(タゾバクタム・ピペラシリン)このいずれかの単剤療法

  • B法|第三世代セフェム系薬(セフトリアキソン、セフォタキシム)またはβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(スルバクタム・アンピシリン)の単剤療法(緑膿菌を考慮しない場合)

  • C法|A法またはB法とマクロライド系薬(アジスロマイシン)の併用療法

  • D法|A法またはB法とレスピラトリーキノロン系薬(レボフロキサシン)併用療法

  • E法|A法またはB法またはC法またはD法と抗MRSA薬(リネゾリド、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン)の併用療法(MRSA 肺炎のリスクが高いと考えられる場合)


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posted by 長尾大志 at 17:33 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月16日

ここ最近の活動リポート

先週からバタバタしておりまして、ブログ更新もなかなかままならなかったりしましたが、別にサボっていたわけではなくて、結構濃い活動が複数重なった、という次第でございます。

広島からの帰りで新幹線内で、少し時間がありますので、濃かったここ最近の活動を振り返りましょう。


6月23日(土)、岡山協立病院にて、胸部X線写真レクチャー。

6月26日(火)、近江八幡市蒲生郡医師会講演会にて、ACOの架け橋、じゃなくてACOのお話。

6月30日(土)、大阪赤十字病院にて、開業医の先生方向け、胸部X線のお話。

7月11日(水)、沖縄県立中部病院にて、胸部X線写真のお話+興味深い症例のご紹介でした。今思い出しても、中部病院を見学できたことは夢のような体験でしたし、やはり現地を訪れて、お話をする、ということの大事さを実感しました。ご縁があるところにはどんどん出かけていきたいな、と強く念願しております。

それにしても、中部病院では、(適々斎塾に代表されるような、あちこちの学生さんや研修医の先生方の勉強会で)見知った顔によく会いました。やはり、意識高い人は沖縄を目指すのか…。


7月12日(木)に戻って参りまして、7月13日(金)は5年生まとめと6年生の1週間まとめ、というか割と渾身の講義になってしまいまして、へとへとになりました。


7月14日(土)、VRチーム医療@洛和会音羽病院。前回同様、チーム対抗戦の臨床クイズ大会でしたが、今回から新機軸を導入しました。ネタバレになるので詳しくは申しませんが、音羽病院の土谷先生によるアイデアが冴えまくり、という感じでした。

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運営、進行もこなれてスムーズに進みますし、どう考えてもこれは1施設内にとどめておくにはモッタイナイ。「チーム医療」でありますから、初期研修医と看護師さん、それにできればPTさんや薬剤師さんでチームを組んで、病院対抗、みたいな感じでできないかなあ、と夢想しています。やるとしたら日本呼吸ケア・リハビリテーション学会(いや、日本呼吸器学会でもいいのですが)の地方会あたりで、意識の高い認定呼吸療法士の方中心でどうかなあ、とか、夢は広がるばかりです。

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夜のうちに広島へ移動、という私の都合に合わせて頂いて、山科駅前でお食事を頂きました。そのときに洛和会丸太町病院の上田先生のスーパーな伝説?も伺い、また、適々斎塾塾長の中西先生と、音羽病院の長坂先生のご関係なども伺うことができました。思いがけず、翌日からの適々斎塾予習になってしまいました。

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洛和会音羽病院の土谷先生、長坂先生、森川先生はじめスタッフの皆さん、参加者の皆さん、本当にありがとうございました。


7月15日(日)、いよいよ適々斎塾広島セミナーです。今回私の担当は、なかなか出だしすぐの枠にて「喘息」「COPD」の、「ガイドラインの向こう側」というテーマでのお話です。

タイミングよく?喘息のガイドライン、COPDのガイドライン、それにACO(Asthma - COPD Overlap)診療の手引き、が立て続けに出ましたので、新しいガイドラインの変更ポイントに触れながら、診療に役立つようなお話に絞って、できる限り考え方をシンプル化してお話をさせて頂きました。

自分の話はともかく、その後引き続きお話を頂いた、心不全、心房細動、HP感染、糖尿病、骨粗鬆症、関節リウマチのお話、これらは呼吸器専門○○になりつつある私にとって、大変ありがたいお話ばかりでした。

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夕方以降は懇親会。

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適々斎塾の皆さん、本当にあたたかく、雰囲気よく、こんな場でも症例クイズあり、塾生の先生のお嬢様方による出し物あり、あっという間に時間が経ってしまいました。

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16日も引き続きお勉強です。睡眠時無呼吸症候群、頭痛、認知症、慢性腎臓病、甲状腺疾患といったコモンな疾患たちのサマリーを頂きました。

今回は中西先生のお膝元、広島セミナーということで広島の先生方も多く参加されていましたし、講師陣も広島の先生方が多く、中西先生のエピソードも豊富に頂いて、すっかりこちらも参加者として楽しませて頂きました。ここまでの会を広島でなされるまでに、中西先生には数々のご苦労があったかと思いますが、これからもますますのご発展をお祈りするものであります。

私の出番の前、初っぱなの講演は中西先生の息子さんが担当されましたし、板金先生の息子さんは沖縄県立中部病院におられますし(偶々今回はお目にかかれませんでしたが)、沖縄に今おられる先生が以前大阪赤十字病院におられたり、雨森先生と中西先生が、来年の某学会でコラボ企画に私を巻き込んで頂いたり、岡山協立病院や福知山市民病院や、それ以外にもこれまで伺ったことのあるご施設の先生方とまたお目にかかったり、人のつながりをたくさん実感できたここ数週間でした。

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中西先生、板金先生、松村先生は、安田先生はじめ適々斎塾の先生方、本当にありがとうございました。

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posted by 長尾大志 at 21:54 | Comment(0) | 活動報告

2018年07月15日

VRチーム医療@音羽病院

今日(昨日)はVRチーム医療@洛和会音羽病院でした。それが終了して、その後広島入りし、すっかり更新できませんでした。明日(今日)は、適々斎塾@広島ですので、また更新できるかどうか…双方改めてレポートいたします。

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posted by 長尾大志 at 00:53 | Comment(0) | 活動報告

2018年07月13日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説10・市中肺炎9・入院治療2・補助療法

■ 補助療法

重症肺炎時にはサイトカインストーム(過剰な炎症によってサイトカインの嵐が吹き荒れる)が生じて肺胞上皮や肺毛細血管内皮の障害を来す、ということから、「炎症を抑える」ことを意識した補助療法が試みられてきました。

1つはマクロライド系薬で、集中治療室入室(つまり最重症)症例における選択肢の一つとして、「マクロライド併用療法」という形で反映されています。

もう1つはステロイド薬で、免疫力を低下させる懸念からこれまでにも議論の的になってきました。システマティックレビューのまとめによれば、

  • 生命予後に影響しない

  • 肺炎の治癒率を変えない

  • 重篤な副作用は増加しない

  • 入院期間が約1日短縮

  • 医療費や耐性菌の発生などは評価不能


であり、重症市中肺炎においては、弱く推奨する、ということになるようです。

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posted by 長尾大志 at 18:34 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説

2018年07月12日

沖縄県立中部病院の見学、およびコアレクチャー「線の使い方」

というわけで、昨日から沖縄弾丸往復、沖縄県立中部病院さんにお邪魔して参りました。

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思い起こせば医学部5年生だった(まだ若かった…)あのころ、沖縄県立中部病院に病院見学に伺いました。きっかけは…やはり「沖縄」だったから、かもしれませんが、遊び呆けていた私の心に、確かな楔が打ち込まれたのです。

当初は「産婦人科」枠での見学でしたが、割と自由時間が多く、明日どうしよう…となったときに、病院見学学生たちの宿にノートが置いてあり、先人たちが見学の感想や、後輩?たちへのアドバイスなどを書き記してあったのです。それを読むと、何人もの先人が、「宮城征四郎先生の回診を見るべし」「刮目せよ」「必須」と書かれていて、全くお名前も存じ上げなかった私は「どんな回診なんだろう?」と好奇心が湧き、翌日参加させて頂きました。

ご存じの方はおわかりだと思いますが、とにかくスゴかったのひとことです。病歴と診察でこんなに確かな診断ができるのか、と衝撃でした。

とはいえ、当時は卒業生のほとんどが出身大学の医局に入る時代。自ら飛び出して中部病院に行く、という度胸もなく、年月が過ぎ去り、いつしかCTと病理に明け暮れ、留学から還ってきた私を待っていたのは滋賀県における「教育」への取り組みでした。

学生さんや研修医の先生方に、確かな診断スキルを、興味を持ってもらえるように教えるには…自分でも試行錯誤をしていましたが、とある先生が持っていた宮城征四郎先生と徳田安春先生の書籍を見せてもらって、ビビビ!!と来たわけです。これだ、と。

それから中部病院関連の先生方の書籍、勉強会、講演会、それから「うふいち会」にも縁あって参加させて頂き、目指すべき目標はここにある!とばかりに学ばせて頂いたという次第です。昨年は喜舎場朝雄先生に、はるばる草津までお越し頂きました。


そんな沖縄県立中部病院で、レクチャーをするという……なんという僥倖!!…

ウチの卒業生であるヤマハル(ヤンバルではない)先生が中部病院で初期研修をすることになり、「いつか呼んでね!」と言っていたのが、まさか実現するとは…。

ということで昨日は、昼前に病院到着し…。

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呼吸器病棟の回診を拝見。感染症が多い!若い先生の勉強になる!

院内もご案内頂きました。とにかく先生方に温かく迎えて頂きました。abscessusが多いのにはビックリしました。また、もっと症例報告をしなくちゃ、と刺激を頂きました。

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沖縄県立中部病院出身の先生方、全国で活躍されてますよね。そして皆さんつながり、絆が深い、そんな印象がありましたが、現場を拝見してお話を伺って、その理由がよくわかりました。ウチでも真似できるところはないかなあ、と考えを巡らせております…。

そして夕方には、胸部単純写真の読影のポイントの解説、いくつか症例をご紹介させていただきました。

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なんとかご満足頂けたら幸いですが…。

その後、有志の先生方と沖縄風料理を満喫!とても楽しい夜を過ごせました。

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呼吸器内科の喜舎場先生、山城先生、根井先生、長野先生、そしてお声がけ下さったヤマハル先生、以前亀井道場の幹事でお世話になった加藤先生(彼以外にも、勉強会で顔なじみの先生方が何人も。さすがです)、それに参加されたすべての先生方、本当にありがとうございました。今回は弾丸でしたが、また是非伺いたいです。

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posted by 長尾大志 at 19:53 | Comment(0) | 活動報告

2018年07月10日

成人肺炎診療ガイドライン2017解説9・市中肺炎8・入院治療1

一般病棟入院患者群に使われるのは、基本的には注射薬になります。細菌性肺炎が疑われる場合、

  • スルバクタム・アンピシリン

  • セフトリアキソンまたはセフォタキシム

  • レボフロキサシン



非定型肺炎が疑われる場合は

  • ミノサイクリン

  • レボフロキサシン

  • アジスロマイシン


の注射薬を使います。なお6項目の鑑別表を持ってしても鑑別が困難な場合、胸部CTを用いて気管支壁の肥厚や粒状影、すりガラス影を見たときにマイコプラズマを疑う、という方法も紹介されています。


さて明日は、聖地 沖縄県立中部病院への訪問です。緊張しています。更新はないかもしれません…。

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posted by 長尾大志 at 18:57 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説